MOT

2014年7月 5日 (土)

T社の中央研究所に行って話を聞いてきました

  • 研究テーマの管理はかなり固く取り組んでいる。5つのステージに分けて、ステージゲート法で管理しているが、ステージ分けの明確な基準は設けていない。
  • ステージゲート法で次のステージに行けるかどうかを以前は点数づけで判断したが、市場環境の変化を採点表に反映させきれないことと、点数と実感が合わないことにより、最近では、評価者が思い悩んで決めることとしている。
  • 研究開発費の決定プロセスは、本当は積み上げで行いたいが、結果的に前年度ベースで決めている。会社の業績によって研究開発費を変動させたりはしない。研究開発費を減らしても人は減らないので、変動させると非効率となる。
  • D-RAMやシステムLSIから撤退したときは、担当者のかなりの部分はNANDに行ったが、社内の別の部署に行った人もいれば、同業他社に転職する人もいた。社内で吸収することもあれば、業界で吸収することもある。
  • 研究テーマのポートフォリオ分析は、事業化していないところにどのくらいの資源を投入するのかという問題を考える上では有効である。
  • 海外の研究所については、外人の研究者と日本の研究所に勤めている日本人研究者とペアに組ませて研究を管理させている。日本人研究者と組ませているのに、教育的な意味はないが、結果的にグローバルな人材になっている。

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2013年3月10日 (日)

サンクコストによるモラルハザード

研究開発の現場でも「これまで、さんざん投資してきたのだから、いまさらやめるのはもったいない」と言って開き直る研究者がいるが、そういう研究ほど、断固、中断すべきである。
-------------【以下、引用】-------------
サンクコストが大きいとき、それを人質にとって追加投資を要求するモラルハザードが起こりやすく、それに応じていると採算がどんどん悪化します。これがソフトな予算制約(SBC)と呼ばれる現象で、社会主義経済では広範に発生し、その崩壊の原因になったといわれています。

日本で1990年代に発生したのも、同じようなSBCです。莫大な債務を抱えた不動産業者を清算すると、貸し倒れ債権が損失になりますが、追い貸しして金利を取れば、当期の損失は避けられます。しかし結果的には、SBCによって不良債権が雪ダルマ式にふくらんだわけです。

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2011年1月22日 (土)

企業の研究開発費におけるナッシュ均衡

前提条件
  • 経営者の思惑
    • 技術のことなんか分からないから、本当は関わりたくない。
    • 研究開発費をケチって、「社長が研究開発費を削ったから、会社の技術力が落ちた」などと言われたくない。
    • 株主に対しては、そこそこの利益を上げて、自らの地位の安泰を図りたい。
  • 研究開発部門幹部の思惑
    • 本当は、研究者自身も、研究部門幹部も、そして、会社の経営幹部にも研究開発費がそれに見合う成果を上げているかどうかを判断することはできない。
    • どうせ判断できないなら、予算をたくさん取って、自らが所属する組織の拡大を図りたい。
    • 経営者が研究開発費の削減を要求してきても、「将来、技術動向が変化したときに、対処できなくなり、大変なことになる」と経営者を脅せば切り抜けられる。
    • ただし、「将来、技術動向が変化したときに、対処できなくなる」確率がどのくらいあるのかは、自分でも分からないし、今、研究していることが本当に役に立つ確信もない。

        研究開発部門の立場
        削減を受け入れる 増額を要求する








    【研究開発部門】
    組織の論理として受け入れられない
    【経営者】
    抵抗する研究開発部門に対しては、「将来、大変なことになっても受け入れる」という株主の後押しが必要
    【研究開発部門】
    経営者に対しては「将来、大変なことになる」という脅しで対処可能
    【経営者】
    本当に将来、大変なことになった場合、責任を取りたくない



    【研究開発部門】
    経営者が増額してくれるのだから、自ら削減を言い出す必要はない
    【経営者】
    研究開発部門が抵抗してこないので、他のことに集中できる
    経営危機になるまでは、必要額より多めの査定となる。
    【安定状態】

    私の結論としては、「経営者が技術に疎い場合、研究開発費は甘めの査定となる」ということになりましたが、いかがでしょうか?

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2011年1月12日 (水)

研究開発費の投資対効果は算定可能か?

早稲田のMBAの面接試験のときに、「研究開発費の投資対効果は算定不能が専門家の共通認識で、近い将来に大きく進展する可能性もない。その研究課題にこだわるなら、来てもやることはない」と言われました。

研究開発ではなく、企業全体の投資対効果は算定可能か?
  • ROA、ROE、ROICが企業の投資対効果の算定指標なので「できる」ということになる。また、労働生産性も投資対効果指標の一つと言える。
  • 指標が複数あることに意味がある。それは、どの指標も完全ではないので、いくつかの指標を比較することによって、相互の不完全性を補完している。
  • また、同業他社や過去の指標とも比較することも妥当な水準を把握するという意味で重要である。
もし「できる」として、どのような問題があるか?
  • 計算結果は、過去の年度の数字を使っている。よって、その数字は「たまたま過去はそうだった」ということを示しているにすぎない。【問題点①:将来についての情報がない】
  • 財務諸表の数字を使うのであれば、その数字は計算仮定の塊である。財務諸表を計算するための計算仮定が変われば数字が変わる。そのような数字をもとに計算された投資対効果の数字を信用するのか?【問題点②:計算仮定の信憑性は疑わしい】
  • もし、投資対効果の数字が良かったとして、その数字をもとに研究開発費を増やすのか? どのくらい増やすのか? 増やせば本当にさらに儲かるのか?【問題点③:具体的なアクションプランに結びつかない】
「できる」ようになるためにはどのような条件が必要か?
  • 複数の指標があって、欠点を互いに補完する関係にあること。
  • 会計学のような学問分野において計算方法が十分に議論されていること。
  • 公認会計士のような計算結果をチェックする仕組みが完成すること。
結局、どういう結論が欲しいのか?
  • もし、研究員が2人の研究所があったとする。A研究員は毎年1億円の研究費で、毎年10億円のリターンを得ているものとする。B研究員は毎年1億円の研究費で、毎年0.5億円のリターンを得ているものとする。
  • 投資対効果は(10+0.5)/(1+1)=5.25となる。
  • 投資対効果は5.25という結論が欲しいのか? それとも、A研究員は研究を続けて、B研究員は研究を止めるべきという結論が欲しいのか?【問題点④:研究テーマごと、研究分野ごとに投資対効果が異なる。会社全体の研究開発費の投資対効果を出せば、全体の平均値しか出てこない。その平均値に意味があるのか?】

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