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2010年7月 9日 (金)

大前研一:中国バブルが終焉しても日本が生き残る道

背景
  • 008年9月のリーマンショック以降、危機的な状態が続いていた世界経済を牽引していたのは間違いなく中国である。しかし、その中国の経済情勢に変化が訪れ、いよいよバブルの終焉を迎えようとしている。
  • これまでの元相場の推移を振り返ってみると、最近の元は非常に安定していたことがわかる。もちろんこれは中国政府がこのレベルで止めようとした意志が働いたからに他ならない。

中国の賃上げスト
  • 中国政府は、現在国内で起こっているホンハイショックを心配すべきだ。(中国企業ホンハイの深センにある子会社富士康をきっかけに各地で起こっている賃上げスト現象)
  • ホンハイショックの発端は、フォックスコンで労働者の自殺が続いたことだ。定められている地域の最低賃金しか支払われないことと軍隊式とも言われる厳しい勤務形態が原因だとされている。
  • そこでホンハイは賃金を30%引き上げたが、労働者の自殺は止まらなかった。今度は賃金を2倍に引き上げることにしたところ、その情報を得たよその会社で賃上げストが起こった。
  • 労働者たちはストをすれば賃上げが期待できると考えたのである。共産主義の中国では労働者にスト権がない。
  • 今まで政府の決めた最低賃金を「やむを得ないもの」と思っていた労働者が初めて「賃金は交渉して稼ぐもの」という感覚を持ったのだ。これがインターネットなどで燎原の火のように中国全土に拡大しているのである。
  • 日系企業は、それなりの賃金を払っていたはずなのに賃上げストにさらされている。彼らは自分たちの賃金が2倍になるまで諦めないだろう。
  • プラザ合意以降の日本企業はイノベーションによって価格のとれる商品を出して円高ショックを乗り越えた。今の中国企業にはそうした経営力がないので、単純に労賃が上がってしまい、競争力を失う、という悪循環に陥る可能性が高い。

中国の現状
  • 中国の安い人件費を求めて工場を移転してきた外国企業は大きな痛手を受けている。そして、今回の元高である。外国企業は中国から逃げ出さざるを得なくなる。
  • 中国政府は平然としている。米国帰りの学者が支配する中国の経済政策ブレーンたちは、労働集約型産業からソフト、クリーン、グリーンな産業への移行を志向している。
  • 人件費が上がって出ていくようなローテク企業はそのままにしておけばよい、という態度である。
  • 米国でも日本でも長い時間をかけてこのような産業の高度化が進んだわけだが、いくら中国と言えども今の経営者の実力を見れば、生産性の改善もイノベーションも望み薄である。
  • 現在の中国の経営者は、高騰している不動産で稼ごうと皆がデベロッパーになるのではないか、と思われるほど、本業への執着心が薄くなっている。もちろん80年代後半の日本企業と同じで、危機感は微塵も感じられない。

中国バブル崩壊の直前を狙っているさや取り業者
  • 人民元の上昇はG20対策の一時的なものに過ぎなかったようで、また下がってきた。「マーケットとはそういうものだ」とも言える。
  • 人民元の急上昇を虎視眈々と狙っているさや取り業者の存在を忘れてはいけない。彼らは人民元が高くなりきったところで、「実は中国経済には問題あり」という噂を流して元の急降下を誘導し、その差額で大儲けしようと企んでいる。

終焉を迎えつつある中国バブル
  • 中国バブルの終焉は、米国でも認識されつつある。
  • 米ニューズウィーク誌「中国後の世界」と題して、日本やイギリスの長い低迷を例に引きながら、中国の今後を展望していた。「リーマンショック後にひっくり返りそうだった世界経済を中国が支えてくれていたが、未曾有の中国バブルも終わろうとしている。その後はどうなるのか」
  • 実際、中国では不動産価格が落ち始めている。高級自動車の販売も低迷してきた。
  • さらに影響が大きいのは、中国の銀行がいっせいに貸し出しを渋り始めたことである。
  • 中国政府は、蛇口を全開にするか閉じるかの二者択一しかできていない。微調整は相当に困難と思われる。
  • これが行き過ぎて中国のバブルが本当に崩壊してしまったら、世界経済が大きな影響を受けるのは必至だ。
  • 中国の代わりに世界経済を牽引する国があるだろうか? インドに期待したいところだが、中国と違って全体主義ではないので、政府のさじ加減ひとつで起爆剤となることは無理だろう。

ECFAを締結した中国と台湾
  • 中国と台湾は6月29日、関税撤廃を軸とした経済協力枠組み協定(ECFA)を締結した。関税引き下げについては800品目余りが対象とされ、ほかにも規制緩和などの進展が含まれる。
  • 中国と距離を置いたままでは台湾の将来はない。だから、このECFAを足がかりに次のステージに向かうべきである。
  • 馬英九政権になってからは中国と台湾の距離が縮まってきた。その結果、台湾の経済力は強くなり、恩恵を受けたのは中国よりむしろ台湾のほうだった。
  • 経営力や技術力では中国よりも台湾のほうが高いので、今後さらに親しくなったとしても、台湾が中国に飲み込まれるわけではない。
  • 人材力を比べたら、正直言って、今の台湾やイスラエルにかなうところはない。いずれも「緊張」が生み出した成果である。
  • ECFAの締結は、日本にとっても台湾進出の好機である。日本の本社を台湾に移しても良いだろうし、中国全土をにらんだ現地法人を設立するにも良いタイミングだ。

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