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2010年6月30日 (水)

法人税減税が成長戦略となる条件

野口悠紀雄 週刊ダイヤモンド 10/07/03

法人税減税
  • 多くの企業が法人税を支払っていない。大部分の企業にとって、いまや法人税は無縁の存在なのである。実際、法人税の税収総額は5兆円でしかない。
  • 企業は重要な投資の資金調達を「借り入れ」で行なう。そして、借入金利子は法人税上損金と見なされるので、法人税額が投資によって変わることはない。つまり、法人税率は企業の投資決定に中立的である。
  • 法人税は事業活動に影響しない。なぜなら、法人税は利益にかかる負担だからだ。利益は企業活動の結果として最終的に決まるものだ。
  • 利益最大化は、企業の基本的な行動原理である。だから、法人税率が変化しても、それが法人の行動に影響を与えることはない。
  • 法人税率引き下げを、国内企業の負担軽減を目的として行なうなら、それは間違っている。法人税制に関して必要なのは、各種の特別措置を整理して、税制を簡素化することだ。
  • 80年代アメリカのレーガン税制改革において、投資減税によって投資を増加させようとした81年改革は失敗に終わった。税収中立型の86年改革こそが、アメリカ経済の活性化に寄与したことを想起すべきだ。

投資減税
  • 投資減税は原理的には企業の投資決定に影響を及ぼしうる。
  • しかし、今の日本のように投資需要がない状態では、投資減税を行なったところで投資支出は増えないだろう。

減らすべきは社会保険料
  • 企業が負う公的負担で重要なのは、法人税ではなく、社会保険料の雇用主負担である。
  • これは、利益の有無にかかわりなくかかる負担である。したがって、企業にとってコストとなり、企業行動に重大な影響を与える。
  • 日本企業の国際競争力の阻害になっている公的負担は、法人税負担ではなく、社会保険料の負担である。
  • だから、日本企業の公的負担を引き下げたいのなら、法人税ではなく社会保険料の引き下げを考えるべきだ
  • ただし、そのためには社会保険の給付水準を引き下げなければならないので、実際には実現不可能だろう。

意味がある場合
  • 法人税の税率引き下げに意味があるのは、外国企業を日本に呼び込むための手段として使われるときである。あるいは、自国企業が海外に逃げるのを防ぐことである。
  • ヨーロッパで法人税の引き下げ競争が起きたが、これが問題となったのは、ヨーロッパ諸国では海外所得に課税しない税制を取っているからである。
  • 日本は全世界で発生する所得に日本で課税する制度を取っているので、法人税が高くても企業が海外移転する原因にはならない。

外国企業への期待
  • 外国企業の進出に期待したいのは、日本国内の投資が激減しているなかでの投資の主体としての役割だ。日本企業が投資を行なわないのなら、それを外国企業に求めるしかない。とりわけ、リスクの高い投資について、それが言える。
  • 法人税を下げても、外国企業の参入が増えるかどうかは疑問である。じつは、これこそが大問題なのである。
  • 数年前に三角合併が解禁されたとき、日本の多くの企業が、株式持ち合いなどを通じて買収防衛策を強化した。経団連はそれを支持したし、経済産業省はいくつかの外国企業進出事案に反対した。このため、三角合併はほとんど効果を発揮しなかった。こうした条件が変わらなければ、法人税率を引き下げても、外国企業の日本進出は増えない。
  • かつてどの国も、程度の差はあれ、外国資本の進出にはネガティブだった。80年代に日本がアメリカを買ったときも、アメリカ国内で強い拒否反応が起きた。
  • これに関する状況は、90年代に大きく変わった。そして、外国企業の進出にオープンな姿勢を取った国が発展した(その典型が、イギリスとアイルランドである)。
  • 法人税を減税するなら、外国企業だけに対して行なってみたらどうだろう。この意見に賛同するかどうかは、本当は何を欲しているのかをテストするリトマス試験紙になる。賛成するのは、経済成長を必要と考えている人だ。反対するのは、経済成長を口実に、じつは国内法人の負担軽減を求めている人だ。



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