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2010年5月

2010年5月21日 (金)

インフレ税 野口悠紀雄 週刊ダイヤモンド 10/05/22

財政赤字を縮小する方法
  • 第1の方法:正統的な方法は、増税または歳出の削減によって、名目の財政赤字を縮小させること。
  • 第2の方法:インフレによって実質の財政赤字を縮小させること。
  • 歴史を見ると、コントロールできないほどふくれ上がった財政赤字は、ほとんどの場合にこの方法で処理されてきた。
  • 1998年のロシアや2001年のアルゼンチンでも同じことが起きた。財政破綻/インフレ/通貨下落は、同義語と言ってもよいほど一緒になっている場合が多い。

インフレが生じるルート
  • 第1のルート:中央銀行による国債の引き受け
  • 第2のルート:国債を国内では消化し切れず、海外消化に頼らざるをえなくなること
    • こうした事態が、日本でも10年以内に発生する可能性が高い。
    • 国債償還の見込みは薄いので日本国債は買いたたかれ、これにより円安が進行する。
    • 輸入物価が上昇して国内でインフレが生じる。さらに、日本から資本が逃避し、それが円安とインフレを加速する。
    • 国内でインフレが進行しているので、実質為替レートは円安にはならない。したがって、日本の輸出企業の価格競争力が高まることにはならない。
    • 為替レートの調整が国内のインフレに遅れれば、競争力はむしろ低下する。
  • 第3のルート:予測が現実を生む
    • そうした事態が生じることが予測されて、日銀引き受けや海外消化が実際に行なわれる前の時点で資本逃避が発生し、円安がもたらされる。
    • そうなったとき、国家非常事態であるとして国債の日銀引き受けが解禁される可能性は高い。
    • つまり、予測が自己実現する。

インフレ税の特徴
  • 明示的な増税や歳出削減ができなければ、インフレという実質的には税であるものに頼らざるをえなくなる。
  • インフレ税は、拒否できないという意味で過酷な税であるばかりでなく、きわめて不公平な税である。税負担が公平の原則とは無関係に生じるからだ。
  • 低所得者に対しても情け容赦なく襲いかかる。裕福な人は贅沢を切り詰めればすむが、最低生活水準の家計は生存を脅かされる。
  • 定期預金のような名目資産を持つ人に重くかかり、不動産のような実物資産にはかからない(むしろ、利益をもたらす可能性もある)。

ギリシャ/ユーロの場合
  • ギリシャはユーロ加盟国なので、通貨を減価させることができない。対処法は第一のもの、すなわち増税・歳出削減による名目財政赤字の縮小に限られる。これが政治的に不可能であれば、ギリシャはユーロから離脱するほかはない。
  • 共通通貨は、インフレ税を禁止し、緊縮財政による名目赤字の縮小を強制する効果を持つ。
  • 通貨減価という選択肢を奪われることは、政策の自由度減少という意味で、共通通貨の本質的欠陥であると考えることができる。
  • 一方で、政治的には容易である半面で公平上はきわめて問題が多いインフレ税を制度的に禁止するという意味で、本質的な長所ととらえることもできる。

日本の場合
  • 日本には共通通貨の制約がないので、インフレ税による実質赤字縮小は可能である。
  • 可能であるどころか、歴史的に見れば巨額の財政赤字はほとんどの場合にインフレ税で処理されており、そして日本における政治的問題処理能力は絶望的なほど低いので、インフレ税に頼る結果となる可能性はきわめて高い。
  • 日銀引き受けに対する制度的歯止めは、きわめて脆弱だ。
  • 円高・デフレが問題だという人が多いので、円安・インフレこそが真の問題であることが、なかなか理解されない。
  • しかし、状況は短時間のうちに急激に転換する可能性がある。そして、こうした事態の勃発に対して、日本国民はほとんど無防備の状態にあると言わざるをえない。

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2010年5月13日 (木)

週刊ダイヤモンド アップル 丸かじり 10/05/15

西和彦 アップルを語る
  • iPadの本質は、「大きな画面でビデオが見られること」にある。
  • 私は、20世紀の5大メディアは、「郵便、通信(音声の電話)、出版、新聞、放送」だと考えている。
  • そこにインターネットが登場して、徐々にそれらをのみ込んでいった。しかも、携帯端末でメディア機能を楽しめるようになった。とりわけ、iPhoneやiPod touchは革新的な端末だった。
  • だが、これらはやはり音声、オーディオ向けの製品だ。動画を手軽に取り出して楽しむというサービスは誰も実現できていなかった。
  • iPhoneでは小さくノートパソコンでは大きい。そこにぴたりとはまるように、iPadが登場した。
  • グーグルをアップルのライバルと見る向きもあるが、それは間違っている。グーグルは「情報は無料」というウェブの常識に立脚しているが、アップルは違う。アマゾンと同じ、有料モデルの世界に住んでいる。
  • こうした背景から考えれば、iPadの次に登場する端末は二つある。iPadより小さい文庫やペーパーサイズの端末と、iPadより少し大きく、新聞や雑誌に適したA4判サイズの端末だ。
  • アップルは、それまで違法に無料でダウンロードされていたインターネットの音楽の世界に突如、iTunesという有料モデルを持ち込んだ。アプリにしても有料モデルで成功している。
  • アップルの最大の功績は、「それまでタダだったものから、おカネを取ったこと」にある。
  • iPadはビデオにぴったりの端末で、特にYouTubeとの相性は抜群だ。YouTubeを見たいから買うという人もいるだろう。
  • アップルは、ビデオを見る端末としてiPadを普及させておいて、そこに有料のビデオ販売モデルを持ち込むだろう。きっと、フリーモデルの威を借りてiPadが普及した後に、有料で質の高いビデオ販売に力を入れるだろう。アップルがすごいのはそこだ。
  • アップルはパーソナルコンピュータ市場では、10%のシェアに甘んじている。アップルはデザインコンシャスで、PCはコストコンシャスだ。「安いものでもいい」というユーザーは、PCを選ぶだろう。だが、iPhoneとiPadは、10%と90%というシェアをひっくり返すほどの実力を秘めている。
  • iPhoneとiPadは、今後、急速に普及するだろう。まさしく、電話やテレビに近いプラットフォームになるのだ。

VS. マイクロソフト
  • アップル創業者のスティーブ・ジョブズとマイクロソフト創業者のビル・ゲイツが宿命のライバルだったことは、よく知られている。
  • 2人の生まれた年は同じ1955年。マイクロソフトは75年に、アップルは76年に創業している。
  • 当初、ゲイツは自社ソフトをアップル製品向けに開発するなど、両社は協業関係にあった。
  • ところが、83年にファイルをウィンドウ形式で表示した「Windows 1.0」を発表すると、ジョブズは自身のアイディアを盗用されたと激怒する。このあたりから、今に続くOSのシェア獲得競争が始まったのだった。
  • ゲイツが順調に業況を拡大し続ける一方、ジョブズはアップルを追われた。アップルに復帰したジョブズが行ったのは、なんと宿敵マイクロソフトとの提携だった。苦境を支えてきたアップルファンのなかには、アップルがマイクロソフトの軍門に下ったかと、失望した者も多かった。しかし、現在の成功を見れば、ジョブズの考えは間違っていなかったといえるだろう。
  • もはや主戦場はモバイル分野に移っている。アップルがiPhoneや「iTunes」で実現したようなビジネスモデルに対抗する商品やサービスを、マイクロソフトはここで打ち出せていない。
  • いまやゲイツは引退し、アップルの時価総額(S&P500株価指数)は瞬間風速で、マイクロソフトを上回った。
  • パソコンOSのシェアでも巻き返す可能性がある。なぜなら、iPhoneやiPadを購入しアップルのクールさと快適さを実感したユーザーは、パソコンを買い替える際に、Mac製品を有力候補に入れるからだ。

VS. グーグル
  • グーグルとアップルは当初、競合するどころか、補完関係にあった。マイクロソフトが両社の得意分野に進出しないために、両社がタッグを組めば最高のコンビになるという評がもっぱらだった。事実、シュミットは06年にアップルの取締役に就任している。
  • ところが、07年にグーグルがAndroidを無償公開した頃から、すきま風が吹き始める。
  • グーグルはこれを開発し、携帯電話メーカーに無償で供与し始めた。携帯電話メーカーにとって、これらの開発は重荷となっているから、願ってもいない福音だった。グーグルのメリットも大きい。たとえば、Androidが搭載されている携帯電話の検索エンジンには最初からグーグルが設定される。Android端末が増えれば、グーグルが広告を提示するプラットフォーム、メディアが増えるのだ。
  • しかし、Androidが握ろうとしている分野は、まさにiPhoneが築き上げたものである。ジョブズが怒り心頭に発するのも無理はなかった。09年、シュミットはアップルの取締役を辞任した。しかも、グーグルが得意分野に侵攻してきたことへの意趣返しのように、2010年4月、アップルは新たな広告戦略を打ち出した。iPhoneの最新OS4では、「iAd」という広告プラットフォームが提供される予定だ。

VS. アドビ
  • インターネット上でアニメーションを表示する技術の一つに米アドビが開発した「Flash」がある。パソコンで見るインターネットのウェブページの表現を豊かにしたければ、Flashを使うことは半ば常識となっている。
  • ところが、ジョブズはFlashには不具合が多く端末の動作が遅くなると断じ、それを公言。iPhoneやiPadでいっさいFlashを見られないようにした。
  •  露骨なアドビはずしに、アドビ側は訴訟の準備すらしているとうわさされ、開発担当の責任者は、今後はグーグルとの関係を強めるとメディアに語っている。


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2010年5月 9日 (日)

HDD部材 争奪厳しく 日経産業新聞 10/05/07

  • ハードディスの部材が供給不足に陥っている。
  • リーマン・ショック後、業界全体が過剰設備に苦しんだだけに、足元の活況にもかかわらず多くの企業は大胆な投資にまだ及び腰で生産設備への投資は慎重。HDDメーカーによる部材争奪戦は激しさを増しており、囲い込みを狙った再編が広がる兆しも出てきた。
  • 08年秋以降の世界同時不況で一時は需要低迷に悩んだが、昨年後半からパソコン市場が急拡大。液晶テレビなどデジタル家電へのHDD搭載も進み、需要は拡大している。
  • 日本電産はいち早く積極姿勢に転じ、永守社長は「今後、毎年1億台ずつHDD市場が拡大するだろう」と、業界予測を上回る強気の見通しを披露する。
  • HDDはモーターのほか、データを蓄積する磁気ディスク、読み書きに使う磁気ヘッドなどで構成し、それぞれメーカーは異なる。全体の増産の足並みが乱れるとボトルネックが発生し、HDD生産にすぐ響く。
  • 最も深刻な供給不足に陥っているのが、磁気ディスクの材料となるガラス基板だ。なかでも世界で約6~7割のシェアを持つHOYAが批判の矢面に立っている。
  • 関係者によると09年末ごろには、需要に対しHOYAは7割程度しか供給できていなかったもようだ。
  • そのHOYAが動いた。磁気ディスク事業を米ウエスタン・デジタルに売却すると発表。シェアが低く技術革新が激しい同事業をやめ、ガラス基板に資源を集中して供給量を増やす狙いだ。1月にはフィリピンに新工場を建設することも決めた。
  • 興味深いのは、この売却案件にウエスタン・デジタルに対する複数年のガラス基板供給契約が盛り込まれていたことだ。買収額が220億円と「相場より高め」(業界関係者)なのも、ガラス基板を安定調達したいというウエスタン・デジタルの思惑が絡んでいたからだろう。ガラス基板争奪戦が再編を誘発したと言える。
  • 昭和電工は08年9月にHOYAと磁気ディスク事業を統合することで合意したが、金融危機後の急激な需要減少を受けて交渉が破談。代わりに富士通の磁気ディスク事業を買収し、HDD本体の事業を富士通から買収した東芝に対するディスク供給を拡大した。昨年春にはウエスタン・デジタルとも2年間のディスク供給契約を結んでいる。
  • しかし、HOYAがウエスタン・デジタルにディスク事業を売却することで、取引関係は一変。HOYAのディスク供給先は東芝が2/3で、ウエスタン・デジタルが1/3だったとみられるが、今後は東芝向けの供給がごっそり抜ける可能性が高い。
  • 日本電産が10年3月期に過去最高益を更新するなど、HDD関連メーカーの業績は総じて好調だ。電子部品業界では業績低迷時に「守りの再編」が誘発されるケースが多かったが、HDD業界は好況下で業界地図が様変わりするという新たな局面を迎えつつある。

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2010年5月 3日 (月)

長谷川慶太郎 2010年 大局を読む

◆デフレ
  • 平和が続く限り、デフレは続く。
  • デフレを生き抜くには、技術革新しかない。
  • 技術革新のための研究開発費を捻出するための企業統合が盛んになるだろう。
  • 技術開発には巨額の研究開発費が必要となり、それを担えるのは大企業だけである。
  • もはやベンチャー企業の時代は終わった。ベンチャー企業が出来ることは、お金をかけない研究か部分的な改良に過ぎない。
  • コンビニも価格破壊に参加してくる。これまではFCの犠牲の上に統一価格を維持してきた。これからはコンビニといえど価格競争からは逃れられない。
  • コンビニはもともと安値販売が可能な仕組みとなっている。
    • 店舗の建設コストは小さい。
    • 商品の仕入は本部任せ。
    • 本部もプライベートブランドの開発にしのぎを削っている。

電気自動車
  • 3年後には100万円で買えるようになるかもしれない。電気自動車はランニングコストの面でも優れているので、低価格になれば急速に普及するだろう。
  • 本命のリチウムイオン電池以外にNAS電池も可能性がある。現状では重いという欠点があるが、トラックやバスでは問題にならない。
  • ハイブリッド車は電気自動車までのつなぎに過ぎない。技術的には既に行き着く先まで来ている。結局、開発にかかった研究開発費を回収できない可能性がある。
  • 電気自動車の設計にはまだ余裕があり、さらに軽くすることができる。部品点数も大幅に削減できる。
  • 部品の点数が減れば、製造コスト、品質・メインテナンスに関わるコストが減少するので、大幅なコストダウンが可能となる。
  • 電気自動車で先行しているのは三菱自動車である。部品を減らすことに全力を挙げており、電気自動車の時代になれば、トヨタやホンダを凌駕する可能性すらある。
  • 電気自動車はパソコンと同じようにパーツを買ってきて組み立てればいいという話があるが、それは大きな間違いである。車を公道で走らせようと思えば、国土交通省の認可が必要となる。この認可を受けられる企業でなければ、電気自動車は製造できない。

電機業界
  • 市場の焦点は「重厚長大」である。
  • 「軽薄短小」は価格競争が激しく、利益が出ない。
  • 「軽薄短小」に関わっていないのは、三菱電機だけである。

日立
  • 子会社5社をTOBにより完全子会社化した。残すのは、2社だけで、残りは本社に吸収後にリストラ(潰す)する予定である。
  • ようやく決断したわけであるが、整理すべき子会社、本社内の部署は多数ある。
  • 博士号を持つ研究者が3000人もいるが、その潜在力を引き出す努力を全くしてこなかった。
  • 日立のような大会社では、社員も会社がつぶれるはずがないと高をくくっているが、このような時代ではそのようながつぶれていく。

財政赤字
  • 国の借金が1000兆円を超えても、日本の金融資産として組み込まれるのであれば、何の問題もない。。
  • 結局は日本人がどのような金融資産を持ちたいのかという問題に帰着する
  • 戦争が起こらなければ、ハイパーインフレは起こらない。

アメリカ
  • 「日本の輸出産業がアメリカに依存している」と言われるが、現実には、「アメリカが日本の輸出産業に依存している」のである。
  • 逆に言えば、「日本の製造業がしっかりしている限り、アメリカは安心してアメリカの製造業を消滅させていくことが出来る」とも言える。
  • アメリカは、農業と金融の国になろうとしており、製造業には興味がない。また、輸出品の中には鉱業関連も多く、製鉄用の石炭も有力な輸出品である。
  • 農業が競争力を持つには、輸送コストが重要となるが、アメリカでは、まず、ミシシッピー川へ運び、そこからは、船が使えるので、輸送コストを安く押さえることが出来る。

EU
  • 最大の弱点は、人口の少ない国によって構成されていることである。
  • 人口の少ない国は、経済の悪化は治安の悪化に直結する。
  • ドイツとフランスが経済の悪化した小国の面倒を見ているが、その負担の大きさに嫌気がさしている。
  • EU域内の人と物の移動は自由だが、企業経営では、国毎の法律・制度の違いにぶち当たる。
  • ドイツは負担の大きさから、EU脱退を検討し始めている。

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